10月14日、iPhoneの最新端末「4S」の販売が開始されました。新端末の投入のほか、今回一番話題になっていることは、従来のソフトバンクモバイルによる販売に加え、新たにauでもiPhoneの取り扱いを開始したことでしょう。
本来、世界では携帯電話端末と通信事業者(電話会社)を自由に組み合わせることができるというのが原則でした。携帯電話端末は家電品店や、百貨店などで自由に購入でき、それに通信事業者が発行するSIMカードを挿入して利用するものでした。組み合わせは基本的に自由です。
たとえば、わが国で言う「機種変更」も、世界ではもっと簡単で、好みの端末を買ってくるだけ。面倒な手続きなどありません。気に入った端末があれば、お金を払えばすぐに自分のものになります。一般的な家電品と同じように購入できます。そしてSIMカードを差し替えれば機種変更完了です。
また、香港では日本よりもはるかに先行して、番号ポータビリティー(MNP)を1999年から実現させていました。たとえばとあるユーザーが「別の電話会社のほうが電話料金がお得だ」と思い立ったら、新たな通信事業者の窓口に行って、MNPの手続きをすれば直ちに新しいSIMカードが発行され、それを差し替えるだけで電話会社の乗換えが完了するわけです。わざわざ携帯電話端末を買い換える必要さえありません。それまで使っていた端末のまま、また電話番号もそのまま、違う通信事業者と契約できてしまうのです。
一方、わが国では、携帯電話端末と回線契約がセットになって提供されています。端末を買い換えるとなると一苦労です。身分証明書を窓口に提示して、そこからさらに手続きに1時間以上かかって、ようやく新端末を手に入れることができます。新たな端末にSIMカードを差し替えるだけで済みそうなものですが、手続き上はそう簡単ではありません。これには、端末や、それに付随するサービスの魅力でユーザーを囲い込んでいきたいという通信事業者の考え方があります。ユーザーが購入しやすいよう、様々な割引施策をセットにして、解約をさせないような手立てをあれこれ考えながら、携帯電話端末を販売しているのです。もちろん、端末販売と回線契約が一体化していることでメリットも見出せます。従来のiモードやEZwebなどといった、通信事業者独自のサービスを展開しやすく、ユーザーもパッケージになっているサービスを端末と共に購入し、すぐに利用できる便利さがあります。通信事業者によるサポート体制も万全です。
世界でも、日本のこうした端末と回線契約をセットにした販売方法を踏襲しようというところも出てきています。中でも日本式のビジネスモデルを見事なまでに研究しつくし、端末販売に取り入れてしまった典型がアップルといえましょう。iPhoneの販売は、基本的には通信事業者と組んで、回線契約とセットで提供する形を取ってきました。端末販売価格や通信料金の価格設定にはアップル側の意向が強いという噂を聞きます。日本の携帯電話事業と唯一異なるのは、通信事業者と端末メーカーの立場が逆転したという点でしょうか。
ともあれ、iPhoneは通信回線の契約とセットで提供されることで、意外にも安価に利用できるともいえます。たとえば、香港に行くとSIMロックされていないiPhoneが販売されています。これを購入し、日本に持ち込んで、たとえばNTTドコモと契約して(つまりiPhone用のmicro SIMカードを発行してもらって)、利用することができます。ただ、この場合は通信事業者が振舞う販売奨励金が一切考慮されない形になりますので、ソフトバンクモバイルやauで利用するのと違って、かなり高価になるわけです。端末価格は6~8万円、通信料もパケット代が8千円以上です。それでもNTTドコモで使いたいという方は、小数ながら実際に使われているわけです。
今回iPhoneがソフトバンクモバイルのほかにauで販売されることになったことで、実質的にソフトバンクモバイル、au、そして並行輸入の形でNTTドコモでも利用できるようになりました。ソフトバンク版、au版はSIMロックが掛かっているとはいえ、同じ端末を3キャリアで利用する環境が整ったといえるのです。
じつは、これはわが国のケータイサービスにおいて大きな変化をもたらすきっかけになるのではないかと期待しています。というのは、本来通信事業者を選ぶということには、その通信品質やネットワークの充実ぶりであったり、通信を利用する料金で良し悪しを決めるのが本筋だと思うのです。
ところが、わが国におけるケータイ関連サービスの報道や店頭での販売合戦を見ていると、どうしてもケータイ・スマートフォン端末の良し悪しや、その販売価格ばかりが比較されてしまっていて、本来の通信事業者の評価までたどり着いていなかったように感じます。iPhoneという同じ端末を3キャリアで利用できる環境が整うことで、厳正に端末の販売価格(値引き)とその利用料金、通信エリアの充実度や品質(通信速度)、サポート体制などを比較し評価してくれるユーザーが増えていくと思います。そうすることで、通信事業者が本業の部分(つまり通信サービスの提供というところ)で、競争を繰り広げてくれるようになり、これがユーザーにとってより健全なケータイサービスへと発展していくことにつながっていくと思うのです。

新たに入手したau版のiPhone 4S。4Sの売りとなる機能は音声で話しかけると、色々と調べてくれる機能「Siri」。まだ日本語に対応していないのだが、これはかなり面白い。話し相手にもなってくれる。たとえば夜中に「Good Mornig!」と話しかけたら「こんな時間に?」と言わんばかりの荒げた声が聞こえてきた(笑)


