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ケータイ業界はいずれIT企業に飲み込まれる?

 記事執筆が1週間遅れてしまいました! 読者の皆様、申し訳ありません。すっかりお盆でボケておりました。皆様はお盆はいかがお過ごしでしたか?

 さて、そのお盆の最中にとんでもないニュースが飛び込んできました。グーグルが約1兆円を投じてモトローラ・モビリティを買収するのだとか。1兆円という金額は半端ではありません。世界有数のネット企業となったグーグルですが、それでも同社の純利益の1.5年分を費やす金額だそうです。はたして、グーグルがモトローラを掌中に収める目的は何なのでしょうか?

 モトローラは1928年創業のメーカーで、ラジオや無線機、半導体チップなどの事業を行ってきました。このモトローラの中でケータイ関連事業を分社化したのがモトローラ・モビリティです。モトローラは、知る人ぞ知るケータイの名機を世の中に送り出してきました。1983年には、民用で世界初の携帯電話となるダイナタックを発売。1989年にはこれも世界的ヒットとなったマイクロタックを発売します。マイクロタックはフリップ型のケータイで、当時世界最小の端末でした。マイクロタックには色々と逸話がありまして、わが国では1988年にNTTがまるで辞書みたいな大柄な携帯電話を発売したばかり。その翌年にモトローラが一回り小さいマイクロタックを発売したことでNTT開発陣がそれよりもさらに小型軽量な携帯電話端末を作ると奮起したのです。これがきっかけで1991年にムーバの発売に至りました。わが国で、現在のような端末メーカー同士が競って携帯電話を製造するというスタイルは、言ってみればモトローラがもたらしてくれたのですね。

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 現在でも世界シェアで5位に入る端末メーカーで、Androidスマートフォンのシェアだけ見れば、1位のHTCに続いて2位に鎮座するメーカーです。そんなモトローラを、なんとグーグルが買ってしまいました。はたして、グーグルの狙いは何なのでしょうか。

 普通に考えれば、グーグルがスマートフォン端末の製造を担うようになる、ということだと思いますが、じつはこれはそう簡単に事を運べません。というのはグーグルを中心にオープンソースなスマートフォンOSとして開発されたAndroidは、グーグルから各端末メーカーへと供給されています。各端末メーカーにとっては、グーグルは中立的な位置づけだったからこそ、Androidの普及が実現できてきたのです。ところがグーグルが自らスマートフォンを製造するとなったら、他の端末メーカーはどう考えるでしょうか。グーグルが競合メーカーになってしまうわけですから。今後もグーグルがAndroidの普及を目指していくとしたら、やはり他の端末メーカーの手前、堂々と自社でスマートフォン端末を製造するという形にはならないのではと思います。

 では、何が目的で? 色々な憶測が飛び交っていますが、やはりモトローラが保有しているケータイやスマートフォンに関する特許を狙ったものというのが有力な説です。ユーザーの皆さんの知らないところで、じつは端末メーカー同士の激しい特許訴訟が繰り広げられています。一説によれば、スマートフォン1台の中に、25万件もの特許が詰まっていると言われています。古くからケータイの商品開発に当たってきた端末メーカーは、これらケータイやスマートフォンに関わる多くの特許をそれぞれ保持しています。その数はメーカーごとに数万件レベルなのだとか。

 一方、スマートフォンOSとして一躍首位に躍り出たAndroidですが、新参だからこそ、こうした特許などの権利に乏しいといわれています。Androidを搭載したスマートフォンを製造するメーカーが、旧来の端末メーカーやアップルなどに次々と訴えられるケースが出ているのだそうです。そこでグーグルが考えたのが、対応できる特許を所持している会社をまるまる買ってしまおうという発想だったのでしょう。モトローラは1万7千以上の特許を持っており、現在申請中のものも7,000件を超えるそうです。グーグルはこのモトローラの有益な資産ともいうべき特許をAndroid普及のために有効に使っていこうという考え方なのでしょう。じつは同様に、マイクロソフトもケータイに関連する特許の所持は少なく、今後のスマートフォン展開を想定してノキアとの関係を築いているところです。そうなるとケータイ関連特許の今後の戦いは、iPhone(アップル)、Android(グーグル)、WindowsPhone(マイクロソフト)の三つ巴になっていくのでしょうか。

 グーグルがモトローラを気まぐれで買ったわけではないにしても、その決定のスピードは従来のメーカーなど老舗企業のそれとはまったくスピード感の違うものだったのでしょう。IT企業の勢いを感じると共に、時代はますますネット企業が中心に動いていくのだと実感しました。すでに世界では端末メーカーの統廃合も進んでいます。わが国でも端末メーカーの再編が徐々に進んでいるところですが、これから向こう数年でケータイを取り巻く企業構成が大きく変わっていくのではないでしょうか。

プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『図解入門業界研究 最新携帯電話業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など。HPはこちら

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